2018.08.24
どうしたら「利益を出し続ける」会社になれるのか
第10回 数字で過去と現在を語らない。数字で未来を判断しない。
会社はヒト、モノ、カネ、情報の集積から成る多面体であるということは、これまで何度か書いてきました。このうち中核となるのは役員、従業員といった「ヒト」です。「ヒト」が商品や設備といった「モノ」、資金である「カネ」、会社の各機能に関する「情報」をコントロールします。
ここで「ヒト」ですが、それぞれが異なった才能や欠点、そして価値観を持っています。この価値観の違いが、従業員同士の啓発につながり、会社の成長の原動力になる場合が多いのですが、一つの目的(今回であれば利益を出し続ける会社になること)を達成する場合に、悪い方向に働くこともあります。
例えば「利益を出す」という目標を考えてみましょう。「利益」は営業利益なのか、税金を支払った後の当期利益なのか?また1円でも利益を出せばよいのか、1億円以上の利益を出さなくてはならないのか? 数人が集まって「利益を出す」ための話をしたとき、個人の価値観によって、それぞれ思っていることは異なっているかもしれません。
これを無くすためには、議論を行う前に言葉の定義を明確にすることが有効ですが、多くの言葉についていちいちそれを行うのは容易ではありません。
ここでの一つのコツは「過去と現在」の話をするときに、また「未来」の話をするときに、なるべく「数字」を使った議論をすることです。
確かに金持ちと貧乏な人とでは、1円に対する価値観は異なります。ただ1円は誰にとっても1円玉1枚の価値です。
数字の話は金額に限られません。例えば顧客満足度、リピート率、訪問件数、仕入先数、商品アイテム数・・・・。数字は至るとことにあふれていて、1%は誰にとっても1%です。
利益を出すために売上高を増やしたい会社があるとしましょう。
売上高を表現するにはいくつかの方法がありますが、例えばそれは以下のように表されます。
① 売上高 = 商品Aの売上高 + 商品Bの売上高 + 商品Cの売上高 +・・・・・・
② 売上高 = 営業1部の売上高 + 営業2部の売上高 + A支店の売上高 +・・・・・
③ 売上高 = 顧客Aの売上高 + 顧客Bの売上高 + 顧客Cの売上高 +・・・・・・・
ここで①は売上高を商品別に、②は売上部署別に、③は顧客別に展開した式です。
売上高を「式」に展開するということは、売上高の「どこ」に着目するのかを明確にするかということであり、この「式」が販売戦略の基礎になります。「式」のパターンを多く考えるほど、売上高を増加させる可能性が高まると考えてください。
また商品数や売上部署、顧客数などが多岐にわたる場合は、例えば売上高の2/3程度までカバーする式を作成して、残りは「その他」でも構いません。
次に売上高を増加させるのに、どれが重要な「式」なのかを選択します。「式」を選択するということは、先にも書いた通り、販売戦略を決定するということです。ただ「式を選択する」=「売上高の「どこ」に着目すればよいの考える」ことは、慣れない人にとっては簡単ではないかもしれません。また人によっても、それぞれ異なる意見があるでしょう。
ここでも数字を利用することが有用です。それぞれの「式」について過去、現在、未来(計画)の数値や比率を並べて比較し、同業他社の数値や比率(それが入手できない場合には、想定でも良いと思います)と比較してみることで、売上高の増減にどの「式」が一番影響を与えているのかが明らかになるはずです。
さらにそれぞれの「式」を分解したり、集約することで、売上高を増加させるための仮設が生まれ、具体的な戦略の立案が可能になります。
例えばある会社で、それぞれの「式」に数値を入れて分析をした結果、「リピート客への販売割合が重要であるにも関わらず、顧客のリピート回数が減っている」ことが判明した場合を考えてみましょう。
これは③の「式」に注目して、顧客をリピート客と新規客に集約し、さらにリピート客の売上金額を「1回当りの平均売上高×リピート回数」に分解することで明らかになります。この場合は顧客のリピート回数を増加させることが、会社の営業戦略となります。
メンバーカードの導入や、既存顧客に対するダイレクトメール、リピート客を想定した商品づくりなど考えることはいくつもあるはずです。具体的な目標数値(リピート回数)を定めて、それを実行すべきです。
改めて強調しますが、売上高を増加させたいという議論をするだけでは、結論は抽象的になることが多く、結果を出すことは容易ではありません。まず実績の数字をもとにして、さらにそれを分析することで仮説、戦略を共有化すること。次に計画の数字を共有化して、それを達成するように各自が行動することが「利益を出し続けること」につながります。
(第10回) 2017年8月18日
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