2018.10.18
【移転価格】タイの移転価格税制 最新動向と実質的対応について
2018年9月27日に移転価格税制に関する法令案(内国歳入法の追加規定)が、国会に相当する
国民立法評議会(National legislative Assembly; NLA)を通過し、法令化が確定しました。
公布は国王の承認を得てからですが、2019年1月からの運用開始となると考えております。
以下に問答形式で、制度の概要と、今後必要となる対応について記載いたします。
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1.対象となる法人は?
関係会社がある会社で、2億バーツ以上の売上高がある会社。
ただし、売上高については、さらに財務省令で細目を定める(本法律の公布後、60日内閣議決定) 。
2.どのような文書の提出が必要になるのか?
関連会社の基礎的情報、および関連会社との取引内容及び金額を報告することが要求される。
様式は法人税申告書PND50に添付する「付表」形式。
3.いつから開始されるのか?
2019年1月以降開始の事業年度に係る分から
4.「付表」の提出期限は?
法人税確定申告書に添付して提出。
12月決算会社の場合は、2020年5月29日(決算期末から150日以内)が一番最初の提出期限となる。
5.いわゆる「移転価格文書」の提出は必要ないのか?
「付表」提出後、5年以内に、移転価格に問題があると税務調査官が判断し、資料の提出を要求した場合、最短で60日、延長されても120日以内(ただし、初回は180日)に、要求資料を提出する必要がある。これには「移転価格文書」を指すと理解でき、これを提出できなければ、移転価格調査が不利に進む。
従って、「付表」の提出が求められる会社は、移転価格文書を準備すべき状況となってきたと考えて良い。
※移転価格文書: マスターファイルとローカルファイルを示すようである。
(cbc(国別)レポートは含まない?)
6.「移転価格文書」とはそもそも何か?
マスターファイルとは・・・
グループ全体の資本系統、事業概要、無形固定資産の帰属等を示したもの。
cbcレポートとは・・・
国別会社別のFS状況等を示したもの。
ローカルファイルとは・・・
会社概要、関係会社との取引内容、Pricingポリシー、関係会社との機能やリスク保有の分担状況、比較対象会社データ等様々な情報を盛り込み、自社の移転価格が正しいことを証する資料。
従って、関係会社取引が多く、赤字となっている若しくは利益率が低い会社は、自己防衛策として準備が必要。
7.ペナルティーの制度は?
要求資料を提出しなかった場合、および提出された情報が正当な理由なく不完全または不正確であった場合、20万バーツ以下の罰金を科す。
8.具体的に「付表」の記載内容は?
財務省令で定められる予定であり、現在のところまだ明らかではない。しかしながら以下が想定できる。
関係会社との取引金額を記載:
● 商製品の売上・仕入れ
● ロイヤリティー等(源泉税が課税される)の収入、支払い
● マネジメント報酬(源泉税が課税されない)の収入、支払い
● 利息の収入、支払い
● 配当金の収入、支払い
● その他、無償での取引
など
9.何を準備しておくべきか?
● 関係会社取引の簡易把握のための、勘定科目の設定
● 設定されている関係会社間の取引価格の理由付けや見直し
● 赤字の場合、解消策について本社と協議
● 文書化について、他国の関係会社で、文書化規定導入国と準備について協議
(近隣では、日本、中国、ベトナム、インドネシア等)
以 上
2018年10月16日
本ブログは、タイに認定会計事務所―朝日ネットワークス(タイランド)株式会社(ASAHI Networks(Thailand) Co., Ltd)の原稿提供により掲載しております。
朝日税理士法人は、会社設立支援、企業組織再編税制、連結納税制度導入、事業再生の業務等、様々な税務・会計サービスを提供しております。また、弊社は、朝日ネットワークスインドネシア(株)、朝日ネットワークス(フィリピン)(株)、朝日ネットワークス(タイランド)(株)と連携し、移転価格文書化等、各種国際税務サービスを提供しております。
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