2013.10.18
タイの移転価格税制 その3【タイの事前確認制度(APA)】
タイの移転価格税制シリーズの3回目です。
前2回は、タイの移転価格税制を概観しましたが、今回はタイの事前確認制度(Advance Pricing Arrangement, 米国ではAgreement(APA))について見ていきましょう。
タイの現地法人が、税務調査で課税所得を更正された場合には、追徴税にプラスして月1.5%の延滞税がかかり、過少申告の場合は、追徴税額を限度としたペナルティが課されます。
移転価格(国外関連者との取引価格)に係る追徴税は高額になるのが通常ですので、海外ビジネスの成功のためには所得更正のリスクをなんとしても避けなければなりません。その方法の一つに、事前確認制度(APA)の利用があげられます。
事前確認制度(以下、APA)とは、納税者が申し出た移転価格の算定方法等を税務当局が認めれば、移転価格課税を回避できる制度です。すなわち、APAで確認を得た条件を遵守して国外関連者と取引を行っていれば、税務調査で移転価格に係る更正を受けません。追徴税や、延滞税、ペナルティ等が課されないのです。
タイでは、2010年4月に税務当局がAPAに関するガイドラインを公表しました。そこでは、APAの対象期間、APAの申請プロセス、APA結果の通知方法など、事務手続きの流れ等が示されています。
注意したいのは、タイのAPAが二国間・多国間のAPA(Bilateral APA)のみを認めており、タイ単独でのAPA(Unilateral APA)は認めていないということです。たとえば、日本の親会社とタイの子会社間の取引に係る移転価格については、タイの税務当局だけでなく、日本の税務当局にもAPAを申請しなければなりません。ちなみに、日本の税法上は、日本単独のAPAも認めています。ただし、タイ単独のAPAを獲得してタイ子会社の課税リスクを排除しても、日本の親会社の課税リスクは取り除けませんので結局、国際的二重課税を排除するためには、二国間のAPAが必要になってきます。日本の税務当局も、二国間・多国間APAを推奨しています。
二国間APAは、実務では、相互協議を伴う場合が多くなっています(下図参照)。相互協議とは租税条約で規定されているもので、国際的二重課税が生じたとき、又は生じる可能性が高い場合に、納税者の申立て、または、条約相手国の税務当局からの申し入れにより、二国の税務当局間で、直接、移転価格に係る課税権を調整してもらうというものです。
タイの税務当局は、日本の親会社との取引規模が大きい企業、利益率が低い、又は赤字の企業、自動車、電機、化学、医薬品業界企業を、移転価格調査の対象とする傾向にあります。移転価格課税という海外ビジネスリスクを排除するために、APAや相互協議の利用を検討することも必要なのかもしれません。
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