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2022.08.29

【グループ通算/第3回】グループ通算制度導入の判断 単体申告からグループ通算制度導入へ

  今回は「グループ通算制度導入の判断」について、単体申告からグループ通算制度の導入を検討するにあたり、どのような点を判断のポイントにすべきか、メリット・デメリットを確認しながらご紹介します。

■メリット

判断基準 (1) 通算グループ内に例年赤字法人がいる場合

 通算グループ内に黒字法人と赤字法人があるような場合、黒字法人の所得を赤字法人の欠損と相殺(損益通算)することにより、グループ全体の法人税額を減少させることができます。 

 例えば、通算グループ内に例年赤字法人がいる場合や欠損が生じてしまうことが想定される法人がいる場合にはグループ通算制度の導入を検討する余地があると考えられます。

判断基準 (2) 試験研究費の税額控除や外国税額控除が有利になる場合

 試験研究費の税額控除や外国税額控除の適用を受ける場合、その適用を受ける法人において法人税額が生じている必要があり、法人税額が生じていない(所得が生じていない場合)にはこれらの税額控除の適用を受けるメリットはありません(外国税額控除については一定の繰越が認められています)。

 この点、グループ通算制度では、連結納税制度と同じく通算グループ全体でこれらの税額控除を計算することになります。そのため単体では欠損だったため上記の税額控除を受けられなかった場合や、単体での法人税額が少なく控除限度額により十分に税額控除を受けられていなかった場合には、グループ通算制度導入により税額控除のメリットを十分に受けられる可能性が考えられます。 
 
 例えば、通算グループ内に研究開発を積極的に行っている法人がいる場合や、国外に支店等があり外国税額控除の適用を受けることができる法人がいる場合には、グループ通算の導入によりメリットを享受することができるものと考えられます。

■デメリット

判断基準 (3) 通算グループ内に資本金1億超の法人がいる場合

 通算グループ内のいずれかに中小法人・中小事業者等に該当しない法人(資本金の額が1億を超える法人など)がいる場合には、全ての法人が中小法人・中小事業者等に該当しないこととされ、いわゆる中小法人等の特例とされる以下の規定の適用が受けれなくなります。
・法人税の軽減税率
・欠損金の繰越控除制度/繰戻還付
・特定同族会社の適用除外
・貸倒引当金の損金算入
・交際費の損金不算入の特例 など
 よって、通算グループ内に中小法人・中小企業者等が多ければ多いほど、全ての法人が上記規定の適用を受けられなくなることによる影響は大きいと想定されます。そのため、グループ通算制度導入の前に影響額がどの程度になるかを事前に検討する必要があると考えられます

判断基準(4)グループ全体が中小法人である場合

 グループ通算制度を導入した場合、中小法人・中小企業者の特例の計算は、単体法人ごとでなく通算グループ全体で計算することになります。


 例えば、法人税の軽減税率の適用する場合、単体申告では単体ごとに年所得800万円まで適用することができるのに対して、グループ通算制度では通算グループ全体で年所得800万円までとなるため、単体申告の方が納税額を低く抑えられることになり、通算グループ各社で所得が出ている場合には単体申告のままの方が有利なケースが想定されることがあります。 

■その他

上記以外の留意すべき点としては、例えば、
・開始、加入に伴う時価評価との関係
・M&A等による組織再編との関係
・電子申告の義務化対応
・事務処理面の煩雑化
等についても検討する必要があるものと考えます。

※制度全体については、第1回、第2回のブログにてご紹介しておりますので、そちらをご参照ください。また、繰越欠損金の取扱いなど個別論点の詳細については、今後ブログで紹介する予定です。

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