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2023.06.27

【グループ通算/第11回】 グループ通算制度を経験してみて

 令和4年4月1日開始事業年度からスタートした「グループ通算制度」ですが、これを記載している現時点では、まだ「確定申告書の提出」は実施していません。「確定申告書の提出期限の延長の特例」を適用しており、7月に申告を実施します。
 ただこれまで四半期決算や確定申告の準備などをしていて「単体納税」や「連結納税」との違いを「実務上経験し、体感した 」ところがあります。今回はその項目について、感想を含めて記載します。


※グループ通算制度と「単体納税制度」「連結納税制度」との違いはブログの【第1回】【第2回】をご覧ください。

実務上体感したこと(1)「中間申告(予定申告)(注1)」の実施

 連結納税では親法人がグループとしての法人税を予定納税していました。グループ通算では「申告・納付は各法人ごと」となっているため、各法人ごとで判定します。したがって今まで「予定納税」をしたことのなかった子法人も「予定納税」をすることになります。
 ただ実務上は「親法人が各法人の予定納税額をまとめて納付する」ケースが大半でした。

(注1)予定申告は、中間申告書を提出せず納付だけした場合に「前年度実績による中間申告があったもの」とみなされる制度。

実務上体感したこと(2)「やっぱり全体で計算する」

 連結納税同様、一番のポイントである「損益通算」「繰越欠損金の使用」などグループで適用する項目は「全体計算」を実施してから算出します。1法人でもスケジュールが遅れるとグループ全体での計算が遅れてしまうため、「スケジュール管理の徹底」は必要となります。

実務上体感したこと(3)「情報共有の大切さ」

・研究開発税制・・・適用可否の3要件(前期の所得金額との比較、賃上げ、設備投資)は、グループ全体の数値で判断するため、各法人の数値を集約する必要があります。
・受取配当等の益金不算入・・・関連法人株式等(注2)に係る配当金から控除する負債利子の計算で「特例計算」(注3)を適用する場合には、グループ全体の支払利子を集約する必要があります。

(注2)他の法人の発行済株式等の1/3超の株式等を計算期間の初日から末日まで継続して有しいてる株式等。
(注3)「適用年度の支払利子等の合計額×10%≦関連法人株式等に係る配当等の額の合計額×4%」 の場合には「(適用年度の支払利子等の合計額×10%)×その配当等の額/適用年度の関連法人株式等に係る配当等の額の合計額」で計算する。

・交際費等の損金不算入おける「接待飲食に係る損金算入の特例」・・・グループの中に1社でも「資本金の額または出資金の額」が100億円超の法人がある場合、全法人に特例が適用されません。グループ内に資本金の額が100億円超の法人が存在するかどうか、すぐにはわからない場合もあるので、情報共有として伝える必要があります。

 上記の項目以外でも、グループ内での情報共有を欠かさず行うことは非常に重要です。「知っているはず、わかっているはず」の思い込みで情報を共有せず、計算の誤りにつながる可能性は大いにあります。

実務上体感したこと(4)「全て電子申告」

 単体納税は資本金の額が1億円超の法人の場合、連結納税は親法人の資本金が1億円超の場合は、申告書だけでなく、決算書、勘定科目内訳書、事業概況書等の添付書類も「電子申告」が義務付けられています。
 しかしグループ通算では資本金の額に関わらず電子申告が義務付けられています。いままで全て書面で提出していた場合、申告書のみ電子で提出、決算書等は書面で提出していた場合には「電子申告対応」のシステムを導入するなど「電子申告用の決算書・内訳書・事業概況書」を作成する必要があります。電子申告では拡張子が「.xtx」である必要があり、自社がオリジナルで作成した財務書類をそのまま使用することはできません。

実務上体感したこと(5)「賃上げ促進税制の適用」

 令和4年4月1日~令和6年3月31日開始事業年度で適用ができる「賃上げ促進税制」(雇用促進税制)は、グループ通算では各通算法人ごとに適用します。
 連結納税では適用可否も含め全体で計算しましたが、グループ通算では各法人ごとに判断し、適用可能となればその法人で適用すればよいわけです。したがって全法人足並みを揃える必要がなく、あらかじめ要件を満たさないことがわかっていれば、それ以上作業をする必要がありません。

 これから確定申告書を実際に提出します。また税務調査等があった場合には体感することが増えるので、そのときにはまたお話しさせていただきます。

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