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2023.08.28

【グループ通算/第13回】中小企業におけるグループ通算制度の活用

 

 グループ通算制度が適用されて1年が経過し、7月に初めての申告を完了致しました。
今回のケースでは、このグループ通算制度の適用を受けている法人のほとんどが連結納税制度の適用を受けていた法人であり、比較的大規模な法人が多かった印象です。
 しかしながら、グループ通算制度は必ずしも大規模法人向けの規定ではなく、中小企業におかれましても十分に活用できる制度となっています。

 導入前には厳密なシミュレーションや個別的な検討事項の洗い出しが必要となりますが、その前に、そもそも「導入を検討した方が良いのか?」という観点から、中小企業ならではの論点を踏まえながら紹介致します。

判断基準(1) そもそも赤字法人がいるのか。

 グループ通算制度は、企業グループをあたかも一つの法人であるかのように捉えて損益通算等の調整を行う制度です。
 これは、グループ内の各法人の所得金額(黒字)と欠損金額(赤字)とを相殺する仕組みのことであり、これがグループ通算制度導入の最大のメリットとなります。
 毎年大きく所得が出ている法人がある一方で、グループ内の法人のいずれかで赤字が出ている場合には、導入の検討を行う価値は十分にあります。

※POINT

 ここで確認すべき事項は、グループ内の各法人の所得金額(黒字)と欠損金額(赤字)のバランスです。
 欠損金額があまり発生しない場合には、グループ通算制度の最大のメリットである損益通算の効果が薄れてしまいます。そのため、まずグループ内の各法人の所得金額、欠損金額を把握し、損益通算の効果がどの程度見込めるか、ある程度は確認しておく必要があると考えます。

※損益通算の詳細については、【グループ通算/第6回】をご参照ください。

判断基準(2)  本当に中小企業ですか?

 通算グループ内のいずれかに中小法人・中小事業者等に該当しない法人(資本金の額が1億を超える法人など)が1社でもいる場合には、全ての法人が中小法人・中小事業者等に該当しないこととされ、いわゆる中小法人等の特例の適用を受けることができません。
・法人税の軽減税率
・貸倒引当金の損金算入
・交際費の損金不算入の特例 など
 よって、通算グループ内に中小法人・中小企業者等が多ければ多いほど、全ての法人が上記規定の適用を受けれなくなるため、資本金が1億を超える法人がいるかどうか検討前に確認すべき事項となります。

判断基準(3) 中小法人等の特例について

 すべての法人が中小法人(中小通算法人)であっても、グループ通算制度を導入した場合、中小法人・中小企業者の特例の計算は、単体法人ごとでなく通算グループ全体で計算することになります。これは中小企業にとって大きなデメリットとなる可能性があります。

 例えば、法人税の軽減税率の適用する場合、単体申告では単体ごとに年所得800万円まで適用することができるのに対して、グループ通算制度では通算グループ全体で年所得800万円までとなるため、通算グループ各社で所得が出ている場合には単体申告のままの方が有利なケースがあることも想定されます。

判断基準(4) グループ内の組織体制は整っているか

 グループ通算制度のメリットは、他のグループ法人と損益通算を行えることです。
損益通算を行うにはもちろんですが、各法人の所得計算が完了している必要があり、その後、損益通算、通算税効果額(通算法人間で収受される金額)の計算を行うことになります。
 そのため、グループ内の各法人がスケジュール通りに所得計算を完了させる体制の構築が求められます。
 また、グループ内のいずれかの法人で所得計算の修正等があった場合には、法人税額や通算税効果額が変わる可能性があり、臨機応変に対応することも求められます。これらに対して各法人が対応できる体制が整っているか導入前に確認する必要がございます。

※POINT

 グループ通算制度の適用可否の判断においては、この体制を整えることが一番大変だと考えております。
 人員の配置や全体での情報共有など導入においてスケジュール通り対応できるか、また顧問の税理士事務所の支援がどの程度あるかも検討事項の一つになるかもしれません。

まとめ

 今回、判断基準という形で、中小企業におけるグループ通算制度の導入による判断のポイントを紹介致しました。
 中小企業がグループ通算制度を導入することの特有のデメリットもある一方、それを加味しても導入のメリットが大きいケースは多分にあります。
 この記事を見て頂き、「もしかしたら導入のメリットがあるかも?」と思って頂けましたら、お気軽にご相談ください。

※導入に関しては他にも開始・加入に伴う時価評価及び欠損金などの取り扱いや研究開発費など検討すべき項目はございますが、今回の記事では割愛しており、過去のブログをご参照ください。

また、弊社ではグループ通算制度の簡易試算サービスを行っております。
こちらも合わせてご参考にして頂けますと幸いです。
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