2014.07.04
OECD移転価格文書化ガイドライン改訂案‐ローカルファイルは現地言語で作成!?(移転価格税制)
2014年6月5日のブログ、6月12日のブログ、6月30日のブログに引続き、「OECD移転価格ガイドライン第5章(文書化)1995年版」の改訂案について見て行きます。
改訂案では、移転価格文書をマスターファイルとローカルファイルで構成する二層構造アプローチが採用されました。今回はローカルファイルに注目しましょう。
ローカルファイルは、多国籍企業グループの個々の関連者間取引に関する財務情報や比較可能性分析、最適な移転価格算定手法を記載するものです。具体的には、個々の関連者(対象事業体)ごとに下記のような情報を記載します。
【ローカルファイルに記載される事項】(国税庁訳)
1.対象事業体 |
●対象事業体の経営ストラクチャー、組織図及び対象事業体の経営報告先となる者及び当該者の主要事務所の所在国に係る説明。 ●当年度又は直近の年度において対象事業体の関与または影響のあった事業再編や無形資産譲渡に関する説明、対象事業体に影響を与えた取引の説明。
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2.関連者間取引 |
*事業体が関与する重要な関連者間取引カテゴリーごとに、以下の情報を提出する。 ●各関連者間取引(製造に関する役務の調達、商品購入、役務提供、ローン、無形資産ライセンス等)、と取引背景(事業活動、多国籍企業グループの金融活動、費用分担契約等)の説明。 ●関連者間取引カテゴリーごとの取引累計額。 ●関連者間取引カテゴリーごとの関連者間取引に係る関連者の特定と、関連者間の関係。 ●文書化された関連者間取引カテゴリーごとの納税者及び関連者の詳細な機能分析(すなわち、果たす機能、使用若しくは寄与した資産(無形資産含む。)と負担するリスクに関して、前年との比較を含め記載)。 ●文書化された関連者間取引価格に直接又は間接に影響を与える可能性のある、納税者の他の関連者間取引の特定と説明。 ●取引カテゴリーごとの最適な移転価格算定手法及びその算定手法を選択した理由の説明。 ●必要に応じて、どの関連者を検証対象企業としたかの明示及びその理由の説明。 ●移転価格算定手法を適用するに当たっての重要な前提条件の要約。 ●必要に応じて、複数年度検証を行う理由の説明。 ●もしあれば、選定された比較対象取引(外部または内部)のリストと説明。移転価格分析において依拠する独立企業の関連財務指標情報(比較対象取引の選定方法及び情報源に関する説明含む。) ●差異調整の説明、再調整の実施対象(検証対象企業か比較対象取引かあるいはその両方か)の明示。 ●選定された移転価格算定手法の適用に基づき、関連者間取引が独立企業原則に則り実施されたと結論付ける理由の説明。 ●移転価格算定手法の適用に当たって利用された財務情報のサマリー。 |
3.財務情報 |
●対象事業体の対象年度の財務諸表。もしあれば、監査済財務諸表を提供し、なければ未監査財務諸表を提供する。 ●財務諸表に基づく移転価格算定手法の適用に当たって利用された財務情報と切出工程表。 ●分析で使用された比較対象取引の関連財務データのサマリーとその情報源。 |
OECD改訂案では、ローカルファイルは、関連者の所在国がインドネシアであれば、インドネシア語で、タイであればタイ語で、というように現地言語で作成されることが有益であるとされています。また、作成時期については、マスターファイルとともにローカルファイルも対象事業年度の税務申告時に作成することがベストプラクティスであるとされています。
また、ローカルファイルはマスターファイルと同様、毎年更新しなければなりません。一方、納税者の負担軽減の観点から、事業状況が変わらない限りにおいて、ローカルファイルの比較対象取引のデータベース検索は3年ごとの更新が認められうるとされています。ただし、この場合でも信頼できる独立企業原則適用のために比較対象取引の財務データは毎年更新されなければなりません。
以上のような、作成言語、作成時期、及び、更新頻度を考えると、納税者の事務負担は相当重くなることが予想されます。
日本経団連は、OECD租税委員会に対して、当該改訂案に対する意見書を提出しています。そこでは、企業の事務負担が重くなる点や企業の機密性の高い書類の提出が必要なことからくる秘密の漏洩の危険性などの懸念事項を指摘しています。他のOECD加盟国の経済団体等も同様な意見をすでにOECD租税委員会に提出し、5月には公聴会が開かれました。
OECDがこれらの意見をどこまで受け入れ、どの程度柔軟性のあるガイドラインを設定できるか。本年9月の最終案が非常に注目されます。
最新情報が入り次第、今後もブログにアップいたします。
以上
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