2018.01.12
移転価格税制の基礎 (6) 移転価格文書化(ローカルファイル)の記載内容は?
昨年(平成28年)10月のことになりますが、国税庁が「国際戦略トータルプラン」を公表しました。これは、国際課税の取組の現状と今後の方向を取りまとめたもので、同庁が国際課税への取組みを重要な課題と位置付けていることがうかがえます。トータルプランの主な内容は、情報リソースの充実、調査マンパワーの充実、及び、グローバルネットワークの強化です。このような国税庁の取組みを考えれば、海外取引を行う企業においては、移転価格文書化などのコンプライアンス遵守の必要性が高まっていると言えるでしょう。
今回は、海外子会社等との国外関連取引を行った企業に作成が義務付けられているローカルファイルの記載内容について見て行きます。
ローカルファイルとは?
ローカルファイルの税法上の正式名称は、「独立企業間価格算定に必要と認められる書類」です。内容は、「海外子会社との取引の内容を記載した書類」と、「海外子会社との取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」とに大きく分けられます。
海外子会社との取引内容を記載した書類
- 海外子会社との取引に係る資産及び役務の内容
- 海外子会社との取引に係る法人及び国外関連者の機能及びリスク
- 海外子会社との取引において、法人又は国外関連者が使用した無形資産
- 国外関連取引に係る契約書等
- 国外関連取引における取引価格の設定、事前確認等の状況
- 国外関連取引に係る損益の切出し
- 国外関連取引に係る市場の状況
- 法人、及び、国外関連者の事業内容、事業方針及び組織の系統
- 国外関連取引と密接に関連する他の取引
海外子会社との取引に係る独立企業間価格を算定するための書類
- 選定した独立企業間価格の算定方法及び選定理由
- 国外関連取引に係る比較対象取引の選定
- 利益分割法を用いた場合の計算
- 複数取引を一の取引とした場合の合理性
- 比較対象取引等についての差異の調整
上記にあげた書類に関しては、平成28年6月に国税庁より例示集が公表されています。そこでは、各書類の説明と必要な情報の例、準備する書類などが掲載されていますので、参考にして下さい。
適用時期と提出期限
ローカルファイルは、平成29年4月1日以後に開始する事業年度より作成が義務付けられます。また、海外子会社等との前期の取引金額(受払合計)が50億円以上(ロイヤルティなど無形資産取引の場合は3億円以上)の場合には、確定申告書の提出期限までに作成(これを同時文書化といいます)しなければなりません。さらに、税務調査において提示または提出を求められた場合、税法で定める一定の期日までに提示または提出がない場合は、『推定課税』及び『同業者調査』の対象となりますので注意が必要です。
以上
ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「中堅企業にも求められる移転価格税制対応」シリーズ」第12回 2017年6月7日初掲載
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