2018.02.09
【移転価格】タイの移転価格税制 最新動向と実質的対応について
2018年1月3日に、タイにおいて移転価格税制に関する法令案(内国歳入法の追加規定)が内閣を通過し、国会に相当する国民立法評議会(National legislative Assembly; NLA)の承認の手続きに進んでおります。
NLAを通過し、法令化されるまでの時間軸を予測するのは、国会議員選挙の予定もあり難しいですが、2018年中に通過した場合、2019年1月からの運用開始となると考えております。
以下に問答形式で、制度の概要と、今後必要となる対応について記載いたします。
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対象となる法人は?
いかなる関係会社取引がある会社で、その事業年度の売上高が3,000万バーツ以上の会社が対象となります。
従って、売上が3,000万バーツ以上となっていても、一切、関係会社取引のない会社は提出の必要はありませんが、少しでも関係会社との間でインボイス等のやり取りがある会社は対象となります。
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どのような文書の提出が必要になるのか?
各事業年度中における関連会社の基礎的情報、および関連会社との取引内容及び金額を報告することが要求されます。様式は法人税申告書に添付する「付表形式」が想定されています。
従って、いわゆる「移転価格文書」(後述)の作成及び提出が、すぐさま必要とされる訳ではありません。
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いつから開始されるのか?
NLAを法案がいつ通過するか次第ですが、年内に法案が通過すれば、2018年1月以降開始事業年度に係る分、からとされる可能性が高いと考えます。
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「付表」の提出期限は?
法人税確定申告書に添付して提出しますので、決算期末から150日以内となります。2018年1月以降開始事業年度からの対象となった場合での仮定ですが、12月末決算法人であれば、2019年5月30日となります。
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いわゆる「移転価格文書」の提出は必要ないのか?
提出が必要なケースがあります。法令案では、「税務調査官は、歳入局長の承認を得て、一定取引金額を超える関連会社間取引がある企業に対し、歳入局長告知に基づく関連会社内取引の移転価格分析に必要な追加の「書類」または「証拠」の提出を求めることができる。通知を受けた企業は、通知日から60日以内に当該書類等を提出しなければならない。当該期限内に提出できない特別な状況を除き、歳入局長は、当該通知日から120日を超えない期間での延長の検討をおこなう」となっています。
従って、移転価格に問題があると税務調査官が判断し、資料の提出を要求した場合、最短で60日、延長されても120日以内に、要求資料を提出する必要がありますが、そこでもし「移転価格文書」を提出出来なければ、移転価格調査が不利に進められることになると考えます。
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「移転価格文書」とはそもそも何か?
会社概要、関係会社との取引内容、Pricingポリシー、関係会社との機能やリスク保有の分担状況、比較対象会社データ等様々な情報を盛り込みますが、自社の移転価格が正しいことを証する資料です。従って、関係会社取引が多く、赤字となっている若しくは利益率が低い会社は、将来の税務調査での自己防衛として、2018年度から準備を開始すべきか否かの検討をされることをお勧めいたします。
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ペナルティーの制度は?
要求資料を提出しなかった場合、および提出された情報が正当な理由なく不完全または不正確であった場合、20万バーツ以下の罰金を科すとなっています。
以上
本ブログは、タイ認定会計事務所―朝日ネットワークス(タイランド)株式会社(ASAHI Networks(Thailand) Co., Ltd)の原稿提供により掲載しております。
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