2018.04.16
海外進出企業の国際税務入門
第6回 海外進出企業は外国税額控除で税金を軽く
今回は、「日本企業が海外ビジネスで課された外国の税金を日本の法人税から差引けるという、『外国税額控除制度』があるそうですが、この制度について教えて下さい」というご質問にお答えします。
外国税額控除制度とは?
外国税額控除制度とは、国際的な二重課税を排除する目的で、外国で納付した外国税額を国外所得に対し日本で納付すべき法人税額の範囲内で控除する仕組みを言います。
日本の企業が海外子会社や企業から受取る、配当、利子、ロイヤルティなどの所得や、外国における長期プラント建設工事などから得る所得は、その所得が発生する外国で課税を受けます。一方、日本の企業は、これらの所得について、居住地である日本でも課税を受けます。このように同一の所得に対して、外国と日本で生じる二重課税を日本における税額控除の方法で排除するしくみが外国税額控除制度です。
対象となる外国法人税額の把握がポイント
外国税額控除の対象となるのは、原則として、所得を課税標準として課される外国法人税です。よって、関税や消費税は対象外です。各国の徴税上の制度を考慮して、源泉徴収税など、収入金額を課税標準とした税で対象とされるものもあります。
また、納付後に任意に還付請求できる税などは外国法人税に含まれません。さらに外国法人税でも、高率な部分の金額などは、控除対象からはずされます。租税条約でみなし外国税額控除制度が適用される場合は、「みなし外国税額」も控除対象に含められます。
外国税額控除限度額の計算は?
控除対象となる外国法人税は、そのまま全額が日本の法人税から控除できるわけではなく、次のような限度額が設けられています。
外国税額控除限度額=全世界所得に対する日本の法人税額 X 国外所得金額(注)
全世界所得金額
((注)全世界所得の90%が限度。また、分母、分子とも外国法人税が課されない国外源泉所得は含めない。)
上の式から、低い税率で課税された国外所得金額が多いほど、控除限度額が増え、控除できる外国税額が増えることがわかります。
なお、控除しきれない外国税額(控除限度超過額)や、使用しなかった控除限度額(控除余裕額)が生じる場合には、翌期以降3年間繰越すことができます。
25%以上保有の外国子会社の納付税額は対象外(外国子会社配当益金不算入制度)
平成21年度税制改正で、25%以上保有する外国子会社からの配当については、益金に算入しない(すなわち非課税)とする外国子会社配当益金不算入制度が導入されました(ただし、配当の金額の5%は非課税所得に対する損金算入不可の費用に対応する金額とみなし、配当金額の95%だけが益金不算入)。これにより、25%以上保有する外国子会社が納付した外国法人税は外国税額控除の対象外となっています。また、配当にかかる外国源泉徴収税も対象外となり、損金に算入することもできません。
外国税額損金算入方式
赤字法人は日本で税金の支払いがないため、外国税額控除を利用しても当期の税金は減らせません。この場合は、外国税額をすべて一般の経費と同様に損金算入することもできます。ただし、一度、この損金算入方式を選択すると、それまで繰越してきた控除限度超過額や、控除余裕額は切り捨てられ、以後、利用できませんので、注意が必要です。
外国税額控除に係るコンプライアンスの遵守
外国税額控除の適用にあたっては、検討事項も多く、確定申告書への記載、納税証明の添付などが必要です。制度を十分に理解し、コンプライアンスを遵守することが求められます。
以上
【初掲載】
ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 「国際税務」シリーズ」 第6回 「海外進出企業は外国税額控除で税金を軽く」 2017年11月17日
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