2018.06.26
【移転価格】平成30年9月までに国別報告事項(CbCレポート)の国際共有が始まる。
移転価格文書の1つ、国別報告事項(CbCレポート)は今年(平成30年)9月までに、日本と外国の税務当局の間で情報交換がはじまります。
【国別報告事項(CbCレポート)の外国との情報交換(国際共有)がこの秋スタート】
国別報告事項は、多国籍企業グループの国ごとの事業活動状況に関する情報をまとめたものです。直前の会計年度の総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループの最終親会社(究極の親会社)は、会計年度終了の日の翌日から1年以内に、e-Tax(国税電子申告・納税システム)によって、これを税務当局へ提供することとされています。この規定は、平成28年4月1日以後に開始する会計年度から適用されています。
さらに、平成30年9月までに、国別報告事項の情報が、日本の税務当局から海外子会社等がある外国の税務当局に提供され、外国から国別報告事項に相当する情報を受領するという、「自動的情報交換」が始まります。
【情報交換される内容】
国際間で情報交換されるのは、多国籍企業グループを構成する会社の事業が行われている国ごとの、以下のような財務内容、及び、事業概要等です。
- 収入金額(対関連者、非関連者の別、合計)
- 税引前利益(損失)
- 納付税額
- 発生税額
- 資本金の額または出資金の額
- 利益剰余金の額
- 従業員数
- 現金・現金等価物を除く有形資産
- 構成会社の名称
- 構成会社の居住地国と本店所在地が異なる場合のその本店所在地国(本店所在地国と設立された国または地域が異なる場合には、設立された国または地域)の名称及び構成会社の主たる事業の内容
- 上記事項について参考となるべき事項
【国別報告事項はどのように情報交換されるか】
-最終親会社等が日本ある場合(条約方式)
国別報告事項は、最終親会社等が日本にある場合は、日本の税務当局に提供する必要があります。その後、当該国別報告事項は租税条約等に基づく情報交換制度により、多国籍企業グループを構成する子会社等のある外国の税務当局へ自動的情報交換を通じて共有されることになります(条約方式)。
-最終親会社等が外国にある場合(原則:条約方式)(例外:子会社方式)
最終親会社等が外国にある場合は、国別報告事項に相当する情報が、当該最終親会社がある外国の税務当局に提出(提供)されます。その後、当該情報が外国の税務当局から日本の国税当局に提供されます(原則:条約方式)。
ただし、最終親会社等がある外国の税務当局が国別報告事項に相当する情報の提供を日本に対して行うことができないと認められる場合(条件の規定あり)は、グループ内の内国法人(最終親会社等に該当するものを除く)等が国別報告事項を日本の国税当局に提供する必要があります(子会社方式)。
【国別報告事項が情報交換された場合の影響】
国別報告事項の情報交換が進めば、アジアの新興国など諸外国が、日本の多国籍企業グループについて、国ごとの重要な財務数値、事業内容を把握することができ、課税を強めることも考えられます。たとえば、自国と他国の利益率を比較し、自国の利益率が低い場合に移転価格調査に踏み切る可能性もありえます。
【親会社主導で 移転価格課税リスクの排除を】
多国籍グループの親会社は、グループ全体のオペレーションを把握することができます。よって、上記のような移転価格情報交換がスタートすることに鑑み、移転価格課税リスクが高いと思われる海外拠点や関連者間取引を洗い出して、当該リスクの排除を主導していくことが求められます。
以上
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