2019.02.06
日本企業の海外進出と子会社管理
第5回「経理財務の「見える化」」
事業とは「ヒト=従業員」、「モノ=商品・サービス」、「カネ=資金」、情報といった企業の経営資源を最適に配分・投下して、企業の目的である利益を最大化する行為です。企業にとっての「見える化」は、これらの経営資源の状況を把握することでもありますが、その前に必要なことは、どれだけ「利益」が出たのか?またその原因はどこにあるのか、具体的には企業の決算内容を「見える化」することでしょう。
企業は月単位、年単位の利益・資金を計算するために「決算書」を作成します。決算書にはいくつかの種類がありますが、特に重要なのは貸借対照表と損益計算書であり、一定期間の資金移動を示すキャッシュ・フロー計算書です。
子会社の決算内容を理解するためには、できれば毎月決算書を現地から取り寄せて、業績について日本本社と子会社が話し合い、さらにはPDCAサイクル(Plan、Do、Check、Action事業計画を作成、統制する経営管理手法)を回していくことが理想なのですが、必ずしもすべての会社でそれができているわけではありません。
ただ資金繰りが厳しい会社や、連単倍率(親会社単体の売上・利益・規模に対して、海外子会社を含めた連結グループがどの程度の倍率になるかを表す数値。連単倍率が1に近いと子会社の比率は低く、それが大きくなるほど子会社の重要性が増す)が高い会社にとっては、子会社の業績がグループ全に与える影響が大きいためそれは必須です。
子会社の決算内容についての会議、PDCAサイクルができない理由と原因には、例えば以下のものがあります。
そもそも子会社で毎月タイムリーに正確な月次決算を作成していない
多くの会社では海外子会社に日本から経理担当者を派遣したり、出張させることは容易ではないため、月次決算の作成は現地スタッフまたは現地の専門家に任せることになります。結果として経理に関する責任者が不在のままそれを作成するため、適時に適切な決算書が作れないことが多くなります。
本社に子会社の決算書を分析するだけの人的・能力的な余裕がない
どこも人手不足の折、日本本社に十分な経理や関係会社管理スタッフを抱えている会社は多くありません。また海外子会社の決算書は日本語以外で作成されることが多く、結果として子会社の決算書を本社に取り寄せたとしても、言葉の問題でそれを分析できないことも少なくありません。
本社が月次決算の内容(例えば在庫の増加や、利益利率の低下)について子会社に質問しても子会社で対応できない
最初の例に挙げたとおり、多くの会社では海外子会社の経理は現地スタッフや現地の専門家に委託します。このため本社とのコミュニケーションをとることが難しいことも多く、結果として決算書の内容について質問しても満足な回答を得られないことも多いようです。
これらは全て難しい課題であり、それぞれ解決することは容易ではありません。
ただ最近のIT技術の進化によって、この問題解決を手助けする手法も生まれ始めてきました。
具体的には弊法人グループも参加している
GLASIAOUS(グラシアス) https://www.glasiaous.com/
というサービスや
マルチブック http://www.multibook.jp/
といったソフトウェアがそれです。
これら等は共にクラウド(インターネットが繋がっていれば、ソフトウェアをパソコンにインストールしなくても、世界中どこからでも入力が可能で、同時に別の場所で入力内容を閲覧することが可能です)とマルチランゲージ・カレンシー(英語や現地の言葉・通貨で会計を入力すると、自動的に日本語・円に変換されます)という2つの特徴を持っています。
このため、例えば上海で中国の簡体字、元で入力した仕訳・決算書などを、同じタイミングで、東京で日本語、円に変換して見ることができるのです。
これらは子会社の「見える化」を図る場合にこれまで大きな障害だった言葉やタイミングの問題を解決できるという意味で、大変優れたサービスやソフトウェアです。ただ誤った内容を入力すると、それがそのまま翻訳されてしまいますので、そこには注意が必要です。
今後子会社を管理して「見える化」するためには、これ等IT技術の助けは大変に有効です。日本企業がこれ等のソフトウェア等を上手に利用することで、「見える化」を行い、ひいては海外でのビジネスを成功させることを願っています。
以 上
【掲載】
ウェブサイト 「イノベーションズアイ」 コラム 日本企業の海外進出と子会社管理(第5回)
2019年2月6日
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