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2013.10.30

日本企業も実行税率マネジメントを!

少し前になりますが、安倍首相は、日本時間の9月26日未明にニューヨーク証券取引所で演説し、「日本に帰ったら投資を喚起するため、大胆な減税を断行する」と表明し、「Buy my Abenomics(アベノミックスは買いだ)!」と訴えました。

 

海外からの直接投資を呼び込むためには、他国に比べて高い実効税率の引き下げが検討課題としてあげられます。なぜなら、欧米系をはじめ世界の多国籍企業は、投資先国の選定にあたり法人実効税率の低さを重要視する傾向にあるからです。

 

法人実効税率とは、国税と地方税をあわせた企業の実際の税負担を示す指標をいいます。これは、国税の法人税に地方税の住民税と法人事業税を合わせ、国税の法人税額を計算する際に事業税を損金(税務上の費用)扱いすることを考慮したものです。

 

算式で表せば、以下のとおりとなります。

 

          ((法人税率X1.1注1)+(法人税率X住民税率)+事業税率    

実効税率=――――――――――――――――――――――――――――

            (1+事業税率)

(注1:復興特別法人税:法人税額の10%を考慮)

 

日本の実効税率は、東京都の場合、35.64%(来年度までの復興特別法人税を考慮すると約38.01%)で、国際的にみて米国に次ぎ高い水準となっています。ちなみに、財務省の統計では、2013年1月現在、各国の実効税率は以下のとおりです。

 

23MJ5国際税務ブログ【実効税率】FInal 

 

多国籍企業は積極的に実効税率マネジメントを実施しており、企業グループの連結決算ベースでの実効税率低減に腐心しています。実効税率マネジメントとは、税務リスクを抑えつつ、実効税率低減の機会を生かす税務管理手法を指します。

 

連結決算ベースの実効税率を低減する手法としては、低減税率国への機能移転の他、外国の投資優遇税制の活用、海外子会社を含めたグループ資本関係再構築による配当源泉税の低減など、多岐にわたります。欧米の大企業では、グループ内に大きな税務部門を置き、実効税率の低減に力を注いでいるのです。税金を損益計算上の現金支出を伴うコストととらえ、それを減少させることを重要な経営課題ととらえているのです。

 

もっとも、実効税率の低減にあたっては、グループ内の所得をむやみに自国から低税率国に移せばよいというものではありません。なぜなら、自国のタックスヘイブン対策税制や移転価格税制によって税務当局に所得を更正され、追徴税を課せられる可能性があるからです。よって、所得更正などの税務リスクを考慮しながら、実効税率を引き下げることが必要になってきます。

 

たとえば、タックスヘイブン対策税制に係る税務リスクを低減させる手法としては、海外子会社にしっかりとした営業、管理、技術、決裁機能を持たせること、移転価格税制では、移転価格の文書化や、税務当局への事前確認、租税条約の相互協議の利用などがあげられます。

 

ところで、経済産業省の「海外事業活動基本調査」によると、日本企業の海外投資決定のポイントとして68.1%の企業が「現地での需要」をあげ、「税制」と回答したのは10.6%であるなど、投資先選定にあたって実効税率を重要視しない傾向にあります。

しかし、今日の激しさを増す国際競争社会の勝者となるためには、日本企業も税金をコストととらえ、税引後利益の最大化による再投資資金や配当原資の捻出という経済行動をとらざるを得ないかもしれません。

 

以上

 

 

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