2022.09.27
公益法人等の中小企業向け優遇措置の適用可否
コロナ禍以降、業績悪化等の影響により、減資により資本金を1億円以下にする企業が増えています。期末資本金の額が1億円以下になると、中小企業向けの税制上の優遇措置を受けられるためです。
(大法人による完全支配関係がある場合など一定の場合を除きます)
一方、公益法人や一般社団・財団法人など資本を有しないこれらの法人については、資本金の概念がないため、中小企業向けの優遇措置の適用の可否については別途規定が設けられています。ここでは代表的な優遇措置について紹介します。
なお、説明の便宜上これらの法人を下記のように分類します。
・Aグループ:公益法人、法人税法上の非営利型法人である一般社団・財団法人
・Bグループ:法人税法上の非営利型法人でない一般社団法人・財団法人
1.法人税率の軽減(年間所得800万円以下部分について15%の税率適用)
⇒ A・Bグループの法人ともにこれらの適用を受けることができます。
ただし、法人税の課税対象となる所得については、Aグループの法人については法人税法上の収益事業から生じた所得(ただし公益法人については公益目的事業に該当するものを除く)についてのみ対象となっているため、800万円の判定となる所得も当該所得となります。
一方、Bグループの法人は株式会社等と同様に普通法人としての取扱いとして全所得課税となっているため、税額計算も全所得を用いて行います。
2.欠損金の繰越控除、欠損金の繰戻還付
⇒ A・Bグループの法人ともにこれらの適用を受けることができます。
3.貸倒引当金の損金算入(一定の繰入限度額まで損金算入可能、一括評価金銭債権について法定繰入率による限度計算可能)
⇒ A・Bグループの法人ともにこれらの適用を受けることができます。
4.交際費課税の特例(年800万円の定額控除限度額の適用可能)
⇒ それぞれ下記の計算式で計算した金額を資本金の額相当額とし、その金額が1億円以下であれば適用が可能となります。
・ Bグループ
(貸借対照表上の期末総資産額-貸借対照表上の期末総負債額-当期純利益(または+当期純損失))×60%
・ Aグループ
Bグループの計算式の金額に、期末総資産額のうちに占めるその行う収益事業に係る資産の価額の割合を乗じた金額
5.租税特別措置法の優遇措置に係る「中小企業者」への該当可否
(試験研究費の特別控除、給与等の引き上げを行った場合の特別控除、少額減価償却資産(取得価額30万円未満)の損金算入の特例等)
⇒ A・Bグループの法人ともに、常時使用する従業員の数が1,000人以下であれば「中小企業者」に該当し優遇措置の適用を受けられます。
このように、公益法人や一般社団・財団法人については、措置ごとに(場合によっては事業年度ごと)に優遇措置が適用可能な中小企業に該当するか否かを判定をする必要がありますので注意が必要です。
以 上
(公益法人チーム)