2022.10.31
公益法人等の税制上の主な取扱い
公益法人、一般財団・社団法人の税制は、法人が行う事業の公益性の観点等を考慮して、株式会社等の普通法人とは取扱いが異なる部分が多くあります。さらにこれらの法人の間でも注意すべき相違点があります。ここでは代表的なものを取り上げ、その概要について解説します。
(1)法人税の納税義務
①‐ 公益法人:法人税法上の収益事業(34業種)から生じた所得に対してのみ課税。ただし、法人税法の収益事業に該当した場合でも、公益認定法上の公益目的事業に該当するものは課税対象外。
②‐ 非営利型の一般財団・社団法人:法人税法上の収益事業から生じた所得に対してのみ課税。
③‐ ②以外の一般財団・社団法人:全所得課税。
⇒ 法人が行う事業の公益性の観点から、①②の法人については課税対象が限定されております。(①②の法人については法人税法上「公益法人等」に該当します)
法人税の実務的には、①②の法人については、全ての収益・費用について法人税法上の収益事業に該当するか否かを判断し、該当するもののみ集計して損益計算を行い税務上の当期純利益を計算する必要があります。また、①の法人については法人税法上の収益事業に該当しても公益目的事業であれば税務上の損益計算からは除きます。
(2)消費税と特定収入
⇒ 全ての公益法人と一般財団・社団法人について、特定収入の影響を加味した仕入税額控除の調整計算が必要となります。特定収入割合の部分については仕入税額控除が制限される分だけ消費税額が増えるため、納税者不利の税制です。
特に一般財団・社団法人については、(1)の法人税のような非営利型か否かに関係なく、全ての法人について特定収入の調整計算を行うことになるため注意が必要です。
消費税の実務的には、法人の収入の全てについて特定収入に該当するか否かをそれぞれの収入ごとに検討し、事業年度における特定収入の総額を算出して、その事業年度における総収入に占める特定収入の割合を計算する必要があります。
(3)預貯金や公社債の利子・株式等の配当等に係る源泉所得課税
①‐ 公益法人:非課税。
②‐ 非営利型の一般財団・社団法人:源泉分離課税。収益事業から生じた利子・配当等に係る源泉税については法人税の申告時に所得税額控除が可能。
③‐ ②以外の一般財団・社団法人:源泉分離課税。法人税の申告時に所得税額控除が可能。
⇒ 公益法人については、利子・配当等について源泉税は非課税となっているため、額面満額を受け取ることができます。一方、一般財団・社団法人については、普通法人と同様に利子(15.315%)・配当(上場株式は15.315%、非上場株式は20.42%)に対して源泉税が課税されるため手取り金額が減ります。
また、一般財団・社団法人の利子・配当等から控除された源泉税は法人税申告の際に、所得税額控除を適用することにより法人税額から減額又は還付がされます。ただし、②の法人については法人税の納税義務自体が収益事業に限定されていることもあり、収益事業以外の事業や資産から生じた所得税については所得税額控除の適用を受けることができないため注意が必要です。
以 上
(公益法人チーム)