2022.12.05
公益法人等に対する税務調査
公益財団・社団法人及び一般財団・社団法人は、公益事業・共益事業の遂行を目的として設立された法人であることから、税の優遇措置が設けられており、社会的な関心も高いものとなっています。そのため、税務当局は事業実態の適格な把握や適正で公平な課税を行う目的から公益法人等についても一般的な株式会社と同様に税務調査が行われています。
実際の税務調査では公益法人等の特有の論点である法人税法上の収益事業の判定や、消費税の特定収入に係る特例計算の適正性なども含めて確認がされます。
ここでは、公益法人等における主な税務調査内容と最近の動向について見ていきます。
【1】主な税務調査内容
(1)法人税
① 収益事業と非収益事業の判定
② 収益と費用の計上時期の適正性
③ 修繕費に資本的支出が含まれていないか
➃ 未確定債務が計上されていないか
⑤ 役員給与が定期同額か
⑥ 税額控除について適用要件該当の有無と金額の適正性
⑦ 交際費の損金算入限度額の適正性
(2)消費税
① 課税、非課税、不課税の区分判定の適正性
② 助成金、補助金などの特定収入の取扱い
(3)源泉所得税
① 報酬等の源泉所得税の徴収漏れ
② 経済的利益の給与課税の判定
③ 年末調整計算に誤りがないか
【2】最近の動向
事業年度のうち税務調査が比較的多く入る時期があります。税務当局の人事異動(7月)や公益法人等の決算が3月に多いことなどが影響して10月~2月に調査依頼の連絡がくることが多くなっています。昨今の新型コロナウィルス感染症の感染拡大により実際の税務調査の件数も減少していましたが、その間も税務当局では申告書類を精査していて調査対象法人を選定しています。
国税庁から発表された調査実績(令和2事務年度)によると、法人税の実地調査状況は189件:前年対比36.6%で、そのうち非違があった件数114件、源泉所得税の実施調査状況は1,030件:前年対比28.8%で、そのうち非違があった件数678件となっています。ともに非違割合は60%を超えています。
最近では行動制限がなくなったため、これまで抑えられてきた調査案件が解放されて反動として今後は調査が多くなることも考えられます。税務調査で指摘されることがないように改めて日々の会計処理や税務上の取扱いなどを確認しておくことが重要です。
以 上
(公益法人チーム)