2024.05.31
<2024年5月>社団・財団通信_新規事業を開始する場合の注意点
コロナ禍が明け、新規事業を開始する社団・財団法人も徐々に増えてきているようです。今回は新規事業を開始する際の注意点を確認していきます。
【1】行政庁への手続きに関する注意点
①公益法人
公益法人が新たに公益目的事業又は収益事業を開始する場合、原則として事業を開始する事前に行政庁への変更認定申請が必要となります。これは公益法人については行政庁に提出された申請書(公益認定時又はその後変更認定を受けていればその際の申請書)の内容に基づき、事業の公益性の判断が行われているため、その内容に変更がある場合には変更認定申請が必要となるためです。
ただし、事業の内容に実質的に変更がなく、受益の規模が単に拡大する場合等の軽微な変更については変更認定申請ではなく、変更の届出でよいケースもあります。
公益目的事業ではなく新たに収益事業を開始する場合についても、公益目的事業と同様に事前の変更認定申請が必要となります。(ただし、現在進められている公益法人改革の中で収益事業の変更については認定事項から届出事項への見直しの動きがあり、今後制度変更がある可能性がございます)
公益法人の場合、新規事業の開始は財務三基準への影響を与える可能性が高くその点からも注意が必要です。例えば公益目的事業を新たに開始する場合には財務三基準の達成に有利になるケースが多いと想定されますが、収益事業を新たに開始する場合には公益目的事業比率の低下等の可能性があり基準が未達成になる可能性があるため、これらの点についても新規事業を開始する前にシミュレーションが必要となります。
②一般法人(移行法人)
移行法人である一般法人については、公益目的事業を新規で追加するなど実施事業等の内容を変更する場合、原則として行政庁への事前の変更認可の申請が必要となります。ただし①と同様に、当該変更が受益の規模拡大等の軽微な変更の場合であり、公益目的支出計画の内容変更を伴わない場合には変更の届出でよいとされております。
【2】税務上の注意点
①法人税
公益法人と法人税法上の非営利型の一般法人については、法人税の納税義務は法人税法上の収益事業(下記図に記載の34業種)を行う場合のみ、当該収益事業に係る所得について法人税の納税義務があります(ただし公益法人については当該事業が公益目的事業である場合には納税義務なし)。したがってこれらの法人が新規事業を開始する際には、その事業が法人税法上の収益事業に該当するか否かの確認が必要です。
(なお非営利型以外の一般法人については、すべての所得が法人税の課税対象となります)
②消費税
新規事業を開始する場合には、当該事業に係る取引が消費税の課税取引に該当するか否かの確認も必要です。例えば、対価性のない収入(補助金や寄附金等)を受け取った場合には当該収入は消費税対象外ですが、受託費等の対価性のある収入として受け取った場合には当該収入は原則として課税取引となり課税売上高に含める必要があります。その他、免税事業者等へ支払う際のインボイス制度に係る仕入税額控除の論点や、消費税額計算の際の特定収入の調整計算の論点などもあります。
【おわりに】
今回ご紹介した公益法人の変更認定申請や、移行法人の変更認可申請については、事業内容等の変更を行う事前に行政庁の認定・認可を受ける必要があります。ただし、その前段階としてこういった認定・認可が必要なのかもしくは変更届出で良いのかについても迷うケースが少なくありません。そういった判断に迷う場合も含めて、これらの変更に着手する事前に行政庁への問い合わせをしていただくことをお薦めいたします。
以 上
(公益法人チーム)