2024.06.28
<2024年6月>社団・財団通信_「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」の概要
令和6年5月24日に報告書「令和5年度公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(以下、「本報告書」)が、内閣府公益認定等委員会と公益法人の会計に関する研究会より公表されました。本報告書はあくまで検討段階ではあるものの、その中で公益法人会計基準等の具体的な見直し案が提示されております。今回はその概要を確認いたします 。
【1】公益法人会計基準の見直しの検討
本報告書では現行の公益法人会計基準について下記のような見直しが検討されております。
①貸借対照表の見直し
・「使途拘束資産」
資産について、法令に基づく控除対象財産としての位置づけを有する「使途拘束資産」の区分を設け、当該資産の内容について注記や附属明細書において必要な情報開示を行う。
・「指定純資産」と「一般純資産」
純資産の区分について、新たに「指定純資産」と「一般純資産」として区分を行う。また当該内容について注記等で情報開示。
・固定資産における基本財産・特定資産の開示の見直し
現行の基本財産及び特定資産の区分には、流動資産としての性質を有する資産(普通預金等)が含まれる場合があり分かりにくい区分方法となっているため、今後は貸借対照表本表では資産の形態に基づく流動固定区分(流動資産・固定資産)とし、基本財産・特定資産の区分については必要に応じ注記で開示する方向。
・貸借対照表内訳表
貸借対照表内訳表は、本表としての内訳表ではなく注記事項に位置づけを改める方向で整理。
②活動計算書(従来の正味財産増減計算書)
・「活動計算書」への名称変更
「正味財産増減計算書」の名称が公益法人の活動状況を収益・費用面から端的に示すものではないこと等から、本来の公益法人の役割が明確になるように「活動計算書」へ名称を変更する方向。
・純資産の増減内容及び費用科目の表示方法
純資産の増減内容は「経常活動区分」及び「その他活動区分」に分ける方向で整理する。なお、一般純資産や指定純資産の財源別区分については活動計算書本表ではなく注記により開示する方向。
費用科目については、外部報告目的に合致するよう、活動別分類(「公1事業費」「公2事業費」「収益事業費」「管理費」等)での表示を検討。
・活動計算書の会計・事業区分別内訳
貸借対照表内訳表の場合と同様、活動計算書の会計・事業区分別内訳の情報についても、本表ではなく注記による開示の方向。
③注記の見直し
注記については、貸借対照表関係の注記としては「会計区分別の内訳」、「資産・負債の状況」、「使途拘束資産の内訳」の作成などを検討。活動計算書関係の注記としては、「財源区分別の内訳」、「一般純資産の会計・事業区分別内訳」、「指定純資産の内訳」、「控除対象財産(6号財産)の発生年度別残高及び使途目的計画」、「事業費・管理費の形態別区分」の作成などを検討。
【2】定期提出書類の見直しの検討
・別表Hの廃止の検討
別表Hについて、 公益法人会計基準の見直しに合わせて、公益目的事業会計の純資産額を基礎として公益目的取得財産残額を算定する方式に改めるため、別表Hは廃止の方向。
・各種別表の見直し
財務諸表における情報開示が充実することに伴い、それと重複が生じないように各種別表との関係の整理を行い、別表についてはできる限り廃止・簡素化の方向。
【おわりに】
2024年6月末現在、公益法人制度改革が進められておりますが、その動きに足並みを揃える形で今回紹介したような公益法人会計基準等の見直しが検討されており、公益法人は今後対応を迫られることになります。見直しについては現時点ではまだ検討段階ではありますが、公益法人Informationのホームページから本号で取り上げた報告書の詳細が確認でき、その中で改正後の財務諸表のイメージについても記載がありますので、一度ご覧いただくことをお薦めいたします。
以 上
(公益法人チーム)