2014.12.26
【連結納税/第5回】連結納税への加入における「みなし事業年度」の留意事項
連結納税への加入における「みなし事業年度」においては、時価評価の対象となる法人は、時価評価の対象となる可能性のある資産(※)について時価評価の必要性を検討する必要があるため、事前に留意しておく必要があります。
※ 時価評価の対象となる可能性のある資産
・固定資産
・土地(借地権等を含む、固定資産に該当するものを除く)
・有価証券(売買目的の有価証券は除く)
・金銭債権
・繰延資産
【みなし事業年度とは】
株式を100%支配されることとなった法人は、株式の取得が行われた日(完全支配関係が成立した日)より連結グループに加入します。
この連結加入日の前日までの期間については、1事業年度とみなして、単体申告を行うこととなります。(以下、「みなし事業年度における申告」といいます)
なお、このみなし事業年度における申告については、申告の延長の申請を行うことにより、株式の取得が行われた日の前日の属する月の月末をみなし事業年度の末日とすることもできます。
通常、人件費や減価償却費等の経費については、月中で締めの計算を行うことはなく、月末において締めの処理を行うのが一般的であるかと思います。そのため、経理の実務的な負担の軽減のため、一般的には、月中で子法人の株式の取得が行われる場合には申告の延長の届出を提出します。
【みなし事業年度における法人税の留意点】
連結グループに加入する際に、時価評価の対象となる子法人については、当該子法人が有する時価評価の対象となる資産について、連結納税の開始に伴う資産の時価評価が必要となるケースがあります。
時価評価の対象となる可能性のある資産の評価額が、1,000万円を超える資産または、資本金等の2分の1のいずれか小さい価額を超える資産については、時価評価が必要となります。(なお、親法人が設立した子法人や5年を超えて完全支配関係が継続している子法人が連結納税に加入する際には、時価評価の対象とはならない法人に該当するため、資産の時価評価は不要となります。)
時価評価の結果、多額な評価益が出てしまう場合には課税所得が発生してしまい、一方で多額の含み損が実現してしまった場合でも繰越欠損金の引継制限により、繰越欠損金が切捨てられてしまうおそれもあります。
実務上、この資産の時価評価によって生じる評価損益がよく問題となるものとして、取引相場のない株式の評価と土地の評価があります。
特に取引相場のない株式については、様々な場面で評価が問題となりますが、連結グループの加入時点においてもその評価額が問題となることがあります。取引相場のない株式は、譲渡制限が付されているケースが多く、その処分にも時間を要するため、連結グループの加入時点までに株式の処分を予定している場合には、事前に売却先を探し買い手と売り手の双方が納得いく売買価額となるように株式譲渡の協議を行う必要があります。