2018.06.28
【連結納税/第31回】連結納税適用会社の税効果会計について
連結納税制度上、連結グループ会社ごとに申告調整額が把握されることから、各連結納税会社の個別財務諸表においては、連結納税制度上認識される一時差異等に対して、法人税(地方法人税含む)、住民税、事業税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債並びに法人税等調整額を計算し、これを計上することとなります。
法人税に係る繰延税金資産については、連結グループ内の他の法人の所得も考慮の上、回収可能性を判断(Point !!)し、将来の会計期間において回収が行われると見込まれない税金の額は控除することとなります。住民税、事業税については法人ごとに単体申告を行うため、その法人の連結所得個別帰属額や欠損の発生見込のみを考慮して回収可能性を判断します。
以下で2つの事例をご紹介します。なお、回収可能性の判断にあたって使用する実効税率は以下の通りです。
・法人税及び地方法人税: 法人税×(1+地方法人税)
1+事業税率
・住民税: 法人税率×住民税率
1+事業税率
・事業税: 事業税率
1+事業税率
<事例Ⅰ>
将来年度において所得が生じる見込みの場合は、その所得の範囲内で一時差異が減算されることにより、連結法人税及び地方法人税個別帰属額を減らすことができるため、回収可能性があることとなり、同様に、住民税、事業税についても税額を減らすことができるため、回収可能性があることになります。
事例Ⅰでは、一時差異減算前の連結所得個別帰属額が800発生し、300の将来減算一時差異が発生する見込みであり、この一時差異の解消により連結法人税個別帰属額を68減らすことができ、住民税を8、事業税を19それぞれ減らすことができます。
<事例Ⅱ>
将来年度において欠損が生じる見込みである場合には、そのうち他の法人の所得と相殺できた部分については、連結法人税及び地方法人税個別帰属額をマイナスする結果となり、その欠損と一時差異の減算の合計額を超える所得が他の法人で発生すれば、その所得と相殺することができます。他の法人の所得と相殺できれば、その分マイナスの連結法人税及び地方法人税個別帰属額を増やせることから回収可能性があるといえます。住民税、事業税については、その法人で法人税額や課税所得が発生しないと減らすことができないため、欠損が生ずる見込みがある場合には回収可能性がないことになります。
事例Ⅱでは、一時差異減算前の法人の欠損が▲500発生し、300の将来減算一時差異が解消する見込みである場合に、同じ連結グループ内の他の法人で課税所得が発生する見込みである場合は、当該課税所得と相殺することができます。この一時差異の解消により、連結法人税及び地方法人税の額を68減らすことができます。住民税、事業税については、法人税も課税所得もマイナスであり、これ以上税額を減らすことができないため回収可能性はないこととなります。
以上