2019.01.28
【連結納税/第36回】連結納税制度における中小企業への優遇措置
連結納税制度にも、中小企業に対する税制優遇措置が設けられています。中小企業に対する税制上の優遇措置は、法人税法上の「中小法人等」に適用されるものと、租税特別措置法上の「中小企業者等」に適用されるものとがあります。
<法人税法上の中小法人等の特例>
連結納税制度にも中小法人等の優遇措置がありますが、連結親法人が中小法人等に該当しない場合は、連結納税グループ全体で中小法人等の優遇措置の適用が受けられません。具体的には次のとおりです。
(中小法人等の特例)
内容 |
適用判断 | |
1 | 法人税率の軽減 |
【全体計算項目】 連結親法人が中小法人等に該当する場合、連結納税グループは優遇措置の適用あり |
2 | 特定同族会社の適用除外 | |
3 | 交際費等の損金不算入制度の定額控除制度※1 | |
4 | 欠損金の繰越控除制度の特例 | |
5 | 欠損金の繰戻還付制度 | |
6 | 貸倒引当金の損金算入 |
【個社毎の計算項目】 連結親法人が中小法人等で、かつその個社の資本金が1億円以下の場合は優遇措置の適用あり |
※1 定額控除限度額は、連結納税グループで800万円のみとなります。
<租税特別措置法上の中小企業者等の特例>
次に租税特別措置法上の中小企業者等の優遇措置ですが、法人税法上の中小法人等と同様、連結親法人が中小企業者等に該当しない場合は、連結納税グループ全体で中小企業者等の優遇措置の適用が受けられません。具体的には次のとおりです。
(中小法人等の特例)
内容 | 適用判断 | |
7 |
少額減価償却資産の取得価額の損金算入 ※2(常時使用する従業員が1,000人超の法人が取得した資産を除く) |
【全体計算項目】 連結親法人が中小企業者等に該当する場合、連結納税グループは優遇措置の適用あり |
8 | 試験研究費の税額控除の特例 | |
9 | 賃上げ・設備投資促進税制 | |
10 |
中小企業投資促進税制 (特別控除については、連結親法人の資本金が3,000万円以下の場合に限る) |
【個社毎の計算項目】 連結親法人が中小企業者等で、かつその個社の資本金が1億円以下の場合は優遇措置の適用あり |
11 |
商業・サービス業・農林水産業活性化税制 (特別控除については、連結親法人の資本金が3,000万円以下の場合に限る) |
|
12 | 中小企業経営強化税制 |
※2 取得価額の合計額のうち、連結納税グループで年300万円に達するまでの金額が限度となります。
なお、上記の「賃上げ・設備投資促進税制」については、法人税だけではなく法人事業税の外形標準課税についても同様の制度が設けられています。ただし、法人税については「連結グループ全体」で判定するのに対し、外形標準課税については「連結グループ全体」と「個社」のいずれでも判定しても可能となっているため、留意が必要です。
また、中小企業向けの租税特別措置について、平成29年度税制改正で新たな基準である「所得基準」が導入され、連結納税制度に関しても影響を受けました。具体的には、過去3年の連結所得金額の平均額が15億円を超える連結納税グループに属する法人は、租税特別措置法に規定されている一定の優遇措置の適用を受けられなくなりました。
最後に先日公表された「平成31年度税制改正大綱(平成30年12月14日与党公表)」では、租税特別措置の対象となる中小企業の範囲について適正化が図られる内容となっています。大規模法人の支配下にある孫会社も特例措置の適用除外となるため、留意が必要です。